透過 EBSD 用試料ホルダー

透過 EBSD 用試料ホルダー

EBSDパターンは薄膜試料を透過した電子によっても形成されます(1)。 これはTEM用薄膜試料を用いてEBSDデータを取ることが可能になることを意味します。さらに薄膜試料を用いることにより、試料中での電子線の広がりが抑制できるため、従来のEBSD法では望めなかった高分解能測定が期待できます。またTEMでは十分な結晶方位解析を行うことは非常に難しいものがありましたが、透過EBSD法ではTEMで観察した領域の完全な結晶方位マップを得ることが可能となり、TEM観察データと共用することで解析の幅が広がります。
TEM試料をセットした本試料ホルダーを使用することにより、EDAX/TSL製OIM検出器をそのまま使用し、この透過EBSD法を実施することが可能となります。

1. 特徴

SEMステージを70゚に傾斜して使用するので、OIM検出器との衝突の心配がありません。また試料の厚さが均一かくさび状かにより、透過電子線の反射またはトラップの処理を可能とし(特許申請中)、パターンの輝度変化の軽減や、コントラストの改善を行っています。

2. 基本仕様

試料サイズφ3.0 (TEM用試料)
試料傾斜角40゚または50゚(SEM試料ステージ70゚傾斜時)

透過EBSD用試料ホルダーセット

透過EBSD試料ホルダーベース

3. 構成

  • 試料ホルダープレート3 枚
  • 試料ホルダーベース1 個
  • 電子線反射プレート *1 枚
  • 電子線トラッププレート1 枚
  • 試料取付用作業台1 個
  • 試料固定リング15 枚
  • 取り付けネジ類 1 式

* 日立製SU-70/SU-6600 用には構成されません。

SEM の型式(ステージタイプ) によっては使用できないものもありますので、ご注文前にご確認ください。

4. 使用方法

TEM試料をセットした試料ホルダープレートを試料ホルダーベースに固定し、それを各SEM の試料ホルダーに取り付けて使用します。 SEM および OIM に改造等を施す必要はありません。SEM試料ステージを通常のOIM測定と同様に70゚に傾斜すると右図のように試料は40゚傾斜した配置となります。この状態で試料Z位置をWD 4-6mm 程度になるように調整し使用します。

5. 応用例

試料が適切な厚さであれば右図のような透過EBSDパターンが得られます。通常のEBSDと同様にHough変換でバンドを検出し、WDによりキャリブレーションを適切に調整することにより、通常のEBSDパターンと同様に指数付ができるようになり、方位マップ等のデータの取得が可能となります。下図は8Cr焼き戻しマルテンサイト鋼の観察例を示します。左が200kV のTEMで得た明視野像、中央が25kVで得た透過EBSD法のIQ像、右が同IPF結晶方位像を示しています。